2025.07.04

抗がん剤治療の爪の痛みや剥がれの原因とおすすめケア対策

抗がん剤治療の爪の痛みや剥がれの原因とおすすめケア対策

抗がん剤治療による副作用、と聞くと脱毛や吐き気というイメージが強いかもしれませんが、手や指先など皮膚にも変化が起こることがあります。この記事では皮膚障害により「爪」にどのような症状が現れるか、そのときケアとして何が必要かをお伝えします。
爪を保護するアイテムや爪にやさしいマニキュアなど、具体的な商品もご紹介しますので、参考になさってくださいね。

爪に出る症状は皮膚障害が原因?抗がん剤の種類別に解説

抗がん剤治療では、がん細胞を攻撃する薬剤が爪の根元にある爪母(マトリックス)や爪床(爪の下の皮膚)といった細胞分裂が盛んな部位にも作用するため、さまざまな爪トラブルが起こります。たとえば、爪が黒く変色したり、縦筋や凹凸が生じたり、薄くもろく割れやすくなったり、痛みを伴ったりすることがあります。これらの症状は、使用する抗がん剤の種類や投与方法、併用薬の有無によって現れ方や発生メカニズムが異なるため、一律の対策では不十分です。本節では、代表的な「殺細胞性抗がん剤」と「分子標的治療薬」に分け、それぞれの薬剤が爪にどのような影響を及ぼすかを詳しく解説します。

殺細胞性抗がん剤のケース

殺細胞性抗がん剤は、細胞分裂が活発な細胞に働きかけます。しかしがん細胞と正常細胞を区別できないため、分裂が盛んな爪の細胞にもダメージを与えてしまいます。その結果、爪の変形や変色、筋が入る、もろくなるなど副作用として症状が現れると考えられています。
症状がいつ現れるかは個人差があり、症状にも幅があります

分子標的型抗がん剤のケース

分子標的型抗がん剤は、特定のがん細胞や関連する経路を狙い撃ちします。しかしその標的はがん細胞だけでなく、正常な皮膚細胞になってしまうこともあります。その結果、皮膚の正常な新陳代謝が妨げられたり、皮脂の分泌が抑制され乾燥状態になり、皮膚や爪に障害が現れると考えられています。

抗がん剤による爪の変化が日常生活に与える影響とは?

抗がん剤治療では、細胞分裂を抑制する作用が爪にも及び、さまざまなトラブルを引き起こします。爪の変色や変形、浮き上がり、剥がれなどが起こると、普段何気なく行っている家事や仕事、身支度などに大きな支障が出ることがあります。ここでは、患者さんが実際に感じやすい「生活の悩み」と、それに伴う痛みや負担、そして刺激を抑える工夫について具体的に解説します。

服や靴下に引っかかる・ぶつかって痛い…意外と多い生活の悩み

爪先が薄く浮いた状態になると、布地や紙に引っかかりやすくなります。特に爪の端が剥がれかけていると、袖口や靴下にひっかかってさらに爪を痛めることもあります。また、足の爪が浮いていると歩行時に靴のつま先部分にぶつかり、靴下を履くだけでも鋭い痛みを感じる場合があります。その結果、長時間の歩行や通勤が苦痛になることも少なくありません。さらに、日常の動作中にドアノブや机の角などに指先をぶつけてしまうことも多く、何気ない刺激でズキズキとした痛みを引き起こします。

家事や仕事で感じる「指先の負担」ーいつ・どんな場面で困る?

炊事や洗濯などの水仕事では、水圧や洗剤の成分が爪の裏に直接刺激を与え、爪の浮きや剥がれを悪化させることがあります。特に熱いお湯や漂白剤を使用すると、痛みが一層強く感じられるでしょう。  また、パソコンのキータイピングや筆記作業など、細かな指先の動きを繰り返す仕事では、浮いた爪が爪母(爪の根元)を引っ張り、長時間にわたって負担が蓄積します。さらに、育児や介護の場面では、お子さんや家族の衣服を整えたり抱っこしたりするたびに指先にストレスがかかるため、痛みや違和感が繰り返し生じやすくなります。

抗がん剤治療中のおすすめケア対策・予防方法をご紹介!爪の保護と快適な生活を両立させる方法とは?

抗がん剤治療中のおすすめケア対策

食事をするとき、スマホを操作するとき、家事をするとき…指先は暮らしの中でひんぱんに目に入るパーツです。それだけに、なるべく気持ち良い状態を保ちたいもの。
どのようなときに、どのようなアイテムを使ってケアをするのが良いか。具体的な商品とともにご紹介します。 

爪が乾燥する、ガタガタする

  • 爪が乾燥する、ガタガタする>>>新爪まわりの保湿オイル

爪がガタガタに生えてきた、なんだかとても乾燥する…健やかな爪を生やすためには、爪をつくる甘皮部分を保湿することが大切です。
「新爪まわりの保湿オイル」は抗がん剤治療で悩む、がん患者さんの声をもとに生まれたもの。医療用ウィッグのパイオニアとも言えるスヴェンソンが、患者さんと接する中で「爪も指先もボロボロになってしまう」というお悩みを聞き、なんとかしたい!と試行錯誤を重ねて完成した商品です。

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爪をやさしく保護してくれる天然由来の成分「ラケシス(成分表ではマスチック樹脂と表記)」、肌になじみやすいうるおい成分「スクワラン」、古来より美容成分として愛されてきた「ツバキ種子オイル」など、保湿成分を贅沢に配合。ベタつきにくく、塗りやすいペンタイプなので、気になったときサッと保湿できます。
爽やかなシトラスの香りも、使うたびに気分をリフレッシュさせてくれますよ。

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  • 爪の欠け、割れを防ぎたい>>>爪にやさしいネイル保護コート

治療をスタートしたばかりで、まだそれほど爪に変化は感じていないけれど、今後なるべく欠けたり割れたりしないよう、予防としてのケアをしたい…そんなときは健やかな爪を育むケアと同時に、表面を保護しましょう。ちょっと何かを取るときや服を着るときなど、外部の衝撃から指先を守ってあげることが大切です。
「爪にやさしいネイル保護コート」はその名の通り爪をやさしくケアしながら、しっかり保護するコート剤。

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天然由来の成分「ラケシス(成分表ではマスチック樹脂と表記)」をはじめ、うるおい成分「ヒアルロン酸」、健やかな爪に欠かせない「コラーゲン」を配合。
一般的なコート剤は小さな瓶に入っていることが多いのですが、こちらはペンタイプなので塗りやすく、携帯しやすいのが◎。自然なツヤ感を与え、爪をイキイキと見せてくれます。
ほんのりローズの香りで、使うたびにうっとり。40℃程度のお湯でオフOK!
パッケージ、そして頼もしい機能からもしかして?と気づいた方もいらっしゃるかもしれません。はい。こちらも医療用ウィッグのスヴェンソンが「新爪まわりの保湿オイル」同様、患者さんの声をもとに開発した商品です! 
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  • 爪の黒ずみが気になる>>>ANDIZUMO水性ネイル

爪の黒ずみ、変色…そんなときは指先を美しさとやさしさで包んでくれる、ネイルカラーで彩りましょう。
ANDIZUMO 水性ネイル」は「水」を主成分としてつくられたマニキュアです。広く一般的に販売されているマニキュアの多くは、有機溶剤が含まれているためデリケートな状態の爪に負担をかけることがあります。

水が主成分の水性ネイルは、有機溶剤を使っていないため爪にやさしいのが最大の特長。独特のツンとしたニオイがないので、がん治療でニオイに敏感になってしまったという方もお使いいただけます。
オフするときは40℃程度のお湯に1分程度浸すと、ネイルの端が浮いてくるのでその部分をつまんで剥がしてください。お湯で落とせるので、除光液でゴシゴシこすって爪に負担をかけることもありません。

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お気に入りの色を何色かあつめて、服を着替えるようにネイルを楽しんではいかがでしょう。
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  • 爪が浮く、二枚爪になる>>>爪テープ25mm幅

爪が浮いてしまう、二枚爪になる、欠ける、割れる…そんなときは、それ以上状態を悪化させないためにテープを巻いて保護しましょう。
「爪テープ25mm」は爪専用の保護テープ。特殊な加工をしているのでとても良く伸び、ベタつかずしっかりくっつきます。口コミでも利用された多くの方が「ベトベトしない」と高評価。テープ同士が接着するので、剥がす時に爪にくっついてひっぱられる、ということもありません。

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※天然ゴムを使用していますので、ラテックスアレルギーの方はご使用を控えてください。
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「外部の衝撃から守る」ということで言うと最初にご紹介した「爪にやさしいネイル保護コート」も同じです。「爪テープ」との使い分けについて、まとめてみました。
【爪テープ】
・爪の割れや亀裂など、実際に症状が出ている場合。
・応急処置として、すぐに保護したい場合。
・爪が浮いているときなど、衝撃から指先を守りたい場合。

【爪にやさしいネイル保護コート】
・治療始めで予防としてケアしながら、爪を丈夫に育みたい場合。
・割れていない部分もふくめ、保護・ケアしたい場合。
・乾燥からくる爪の欠けなどを防ぎたい場合。
※「爪にやさしいネイル保護コート」は爪が欠けていたり、膿んでいたり、実際に症状が出ているときは使用を避けてください。

抗がん剤治療(投与)中の予防方法

爪がもろくなり割れてしまう、剥がれてしまう、感染を起こしてしまう…抗がん剤の種類によって、爪に大きなダメージを与えるものがあります。
近年、そのような状況をふまえ「症状が出てから対処する」のではなく、あらかじめ「予防」する方法も考えられています。
フローズングローブ・ソックスは、抗がん剤投与中に手足を冷やすことで血流を減らし、抗がん剤の影響を抑えると考えられているもの。予防法として注目度は高いものの、どの医療機関でも対応している、という状況ではまだないようです。
使う薬によって、そして同じ薬を使っても個人の状態によって副作用は異なります。気になる情報をキャッチしたときは、まず主治医や看護師さんに相談してください。

抗がん剤による爪の症状はいつまで続く?回復までの期間は?

抗がん剤治療によって生じた爪のトラブル(変色・縦筋・凹凸・薄化・割れ・疼痛など)は、治療終了後もすぐには元に戻りません。爪の再生スピードは比較的遅いため、手の爪であれば およそ6ヶ月程度、足の爪では 12ヶ月前後 かけて徐々に健康な状態に回復していくとされています。再生期間は、使用した薬剤の種類や投与量、患者さんご自身の体調・栄養状態によっても左右されるため、日々の経過観察と根気強いケアが欠かせません。指先は視界にも入りやすく、ケアを怠ると刺激や痛みが悪化しやすいため、優しく保湿しながら様子を見守りましょう。 

爪の痛みや皮膚障害が良くならない場合

抗がん剤による爪の痛みや皮膚障害が1~2週間以上続く場合は、早めに皮膚科やがん外来を受診しましょう。赤み・腫れ・膿があるときは、細菌・真菌の培養検査を行い、抗生物質や抗真菌薬の外用・内服が必要になることがあります。膿や強い痛みがある場合は、局所的に爪を切開して排膿したり硬くなった角質を除去したりする処置が有効です。

受診後は、医師の指示に従い保護テープや手袋の素材を見直し、入浴後や水仕事後には低刺激性の保湿剤やネイルオイルでケアを継続しましょう。指先への過度な負荷は避け、週に一度程度爪の状態を写真で記録し、改善が見られない場合は再度相談してください。これにより、痛みと炎症を早期に抑え、快適な日常生活をサポートします。


​​いまこの記事をご覧になっているPreStaは、これまで13万5千人以上の方に医療用ウィッグを提供してきたスヴェンソンが運営しています。多くの患者さんと接してきた経験をもとに、治療中に必要な商品をセレクト。もちろんその中にはこの記事で紹介した爪のケアアイテムも、それ以外のものも多数取り揃えています。
ぜひ、ご覧ください。

監修 齊藤典充 先生 /なごみ皮ふ科院長/医学博士

1933年北里大学卒業、同大学皮膚科に入局
1988年~2000年 米国カルフォルニア大学サンディエゴ校留学
国立横浜病院(現:国立病院機構横浜医療センター)皮膚科、北里大学皮膚科助手、講師、国立病院機構横浜医療センター皮膚科部長、横浜労災病院皮膚科部長、米元皮膚科医院副院長を経て、2020年10月より現職に至る

専門は脱毛症、血管炎、血行障害。日本皮膚科学会の脱毛症に関する診察ガイドラインの作成に携わるなど、長年、診察の第一線で脱毛治療・研究の分野をリードしている

脱毛のストレスを、 一緒に軽減していきましょう。
抗がん剤治療は、副作用として脱毛をきたすことがあります。その頻度は決して低くはありません。見た目が変わることは、さらに 精神的負担となってくると思います。脱毛を完全に予防するのは難しいとは思いますが、毛髪が再度生えてくることも多く、治療中に行うと良いケアもありますので、今できることを一緒に考えてみましょう。

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